刑法65条1項2項の共犯と身分の判例・通説の考え方!

雑学

https---www.pakutaso.com-assets_c-2015-05-MS251_kangaerukoushi-thumb-1000xauto-15175刑法65条1項と2項の共犯と身分は大学とかで教えられてもチンプンカンプンになる人も多いのではないでしょうか?真正身分犯とか不真正身分犯とか分かりにくいし。そこで、全部を理解するのはあきらめて、とりあえず通説と判例の考え方だけ理解するのはどうですか。

 まず条文

(身分犯の共犯)

第65

1.犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。

2.身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。

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65条1項2項の矛盾点

1項は連帯的に考える。つまり身分がなくても共犯が成立する。(犯罪に参加すれば身分がなくても共犯としてその犯罪の共犯が成立する。)

2項は個別的に考える。つまり、身分がない場合は別々に考える。(犯罪に参加しても身分がなければその犯罪の共犯は成立しない。

連帯してるのか個別的に考えるのか分からない。ここが議論の的になります。上のカッコ内の赤字の部分だけみてもらえるとおかしいことがわかると思います。『一体身分がないときはどうなるんですか?立法者の間違いじゃないんですか?』

通説・判例の結論

65条1項は構成的身分(真正身分)の規定

「犯人の身分によって構成すべき」という文言を素直に考えるのがベストじゃないの?ってことで、犯罪が成立するために「身分」が必要なやつを「構成的身分犯」又は「真正身分犯」といって、65条1項の影響を受けると考えます。

※「真正身分犯」とは、行為者が一定の身分があることで可罰性が認められるものをいう。(構成的身分犯ともいう。)

非身分者が身分者と犯罪をしたとき、

身分者と同じ犯罪を行ったと考えます。共同正犯(60条)

また、

非身分者が身分者を利用したとき、

身分者のした犯罪の教唆や幇助(狭義の共犯といわれる。)が成立する。

身分者が非身分者を利用したとき、

非身分者の行為は犯罪とならない。だって犯罪を成立させる身分がないから。このとき考えるのは身分者の行為が犯罪とならないか。身分者の行為が間接正犯なら身分者の単独犯に、意思連絡あれば共犯になる。(これは、共犯従属性説の考え方、実行行為者の行為が犯罪じゃなければそそのかした者も犯罪にならない)

 

逆に

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65条2項は加減的身分(不真正身分犯)の規定

「身分によって特に刑の軽重があるとき」というのは、身分があることで刑に差が生じるもの(加重・減軽)。これを「加減的身分」又は「不真正身分犯」が65条2項の影響を受けると考えます。

身分とは犯人の人的関係における特殊な地位又は状態をいう。(最判昭27.91.9)

 

※「不真正身分犯」とは、身分がなくても犯罪を構成するが、一定の身分があると通常より重い刑となるものをいう。(加減的身分犯ともいう。簡単に言うと懲役の長さの上限に影響するもの。)

 

初学者にとって分からない人もいるので、具体的に例えを紹介します。

構成的身分の例

公務員(という身分がある場合)が賄賂をもらったりすることで収賄罪(197条)

 

男(という身分)が女性を姦淫したら強姦罪(177)

 

他人の物の占有者(という身分)が横領したら横領罪(252)

 

身分がなければ犯罪にならないものです。

加減的身分の例

「業務者」が「他人の物を占有」して横領すると業務上横領罪(253)。共犯者は、業務者でなければ、単純横領罪。※この場合「業務者」という身分があると刑が加重されると考えます。業務上横領罪については争いがありますが二つの身分があると考えるとわかりやすいと思います。

 

「常習」的に「賭博をする人」なら常習賭博罪(186Ⅰ)、常習者でなければ、賭博罪。※この場合「常習性」がある方が刑が重くなると考えます。

業務上横領罪は紛らわしいので説明は下でします。

連帯する共犯の範囲

判例上共謀共同正犯が認められています。これは犯罪行為を実行していないものも一緒に犯罪行為を計画し自己の犯罪として行った場合には、共同正犯とするという考え方です。

 

女性は強姦できません。しかし、実行する男性と計画し、被害者を傷つけたりする意思があったなら、男性を通じて犯罪を行うことは可能なので65条1項で強姦罪の共同正犯になります。

 

このことから、65条1項の「共犯」の範囲は広義と狭義の共犯だといえます。

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業務上横領罪

横領罪の身分は「他人の物の占有者」です。ここだけ考えると、身分者が非身分者と横領した場合には、身分のないものも横領罪の共同正犯が成立します。

では、業務上横領罪の場合はどうなるのか?この場合「業務」として行っているという身分と「他人の物の占有者」という2つの身分があるので議論が生じます。

他人の物の占有者という身分がある場合

単純に考えると、横領罪があるので、そちらを構成的身分とするのが素直だと思います。ですから。「業務」は刑の軽重に影響する加減的身分だと考えます。

 

そうすると、65条2項の影響で「業務」という身分がないものには業務上横領罪は成立しません。ですから、業務者には業務上横領罪が成立し、単純横領罪の共同正犯となり、非業務者は単純横領罪の共同正犯が成立します。

 

非占有者で非業務者が業務上占有者と共同して犯罪した場合

ここは判例がないのでどう考えるか議論のあるところです。上で説明したとおり占有者が業務上占有者と横領した場合に、占有者は単純横領罪になることとの均衡を考えると、「業務上占有者」を一つの身分として構成的身分(真正身分)と考え、「非業務上非占有者」に65条1項によって「業務上横領罪」が成立すると考えるのは均衡を失すると思います。

 

なぜなら、占有者なら単純横領罪の共犯なのに身分がまったくないものは、業務上横領罪の共犯となって、身分がない方が重たい刑になってしまうから。そこで、「占有者」という身分が構成的身分(真正身分)として非占有者はまず65条1項によって、単純横領罪の共犯になり、「業務」を加減的身分(不真正身分)として65条2項によって、「非業務」なので単純横領罪の共犯とするのがバランス的にいいと考えるのがいいのではないでしょうか?

最後に

上の考え方は基本的にあっていると思いますが、管理人自身が完璧に理解していると思っていても、そうとは限らない場合があるのであくまで参考程度にして、教科書や基本書、判例集などで確認するのをおすすめします。


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